私の名前はL・K・フロッグ。
ここレトロな街、川越で人間に交じってフィールドワークを行っている。
もう30分も雨を眺めているだろうか。気になることがあり、インフォーマントのシンリシを探していたのだが、今日は見当たらないようだ。
冷めた泥水のようなコーヒーを飲み干すと、私は窓枠を後にした。
ねぐらを目指して、パソコン通りを進む。
液晶モニターを横切る時、映し出されたチラシが目に入った。中止になったはずのイベントを知らせるものだ。
人は、何かとレジャー活動を考え出しては、忙しそうにしている。不思議なものだ。いや、自分がマージナルな存在というだけかもしれない。
思えば、人の世界に来る前から、他のカエルたちとも距離を置く傾向があった。IKAの会合や集まりにしても、たまに顔つなぎに行く程度だ。しかし、それは私のせいばかりでもない。
TAKOがIKAになるにあたって、他の両生類たちからの圧力があった。カエル族の責任として、よりケロリズムを推進すべきという話だったのだが、実情はやっかいな人類対策をカエルに押し付けるものでしかなかった。
それを受けたFUGU(Flog Union of Govern Universe:宇宙統治カエル連合)は弱腰で、ケロリズムをより推進しているという既成事実を作ろうと動き始めた。FUGUは認定制度などを制定することでそれに対処した。それに合わせて、これまでケロリズムを担ってきたTAKOも変革を余儀なくされた。結果的に、それまでのメンバー以外の、新しく認定されたケロリストたちにも開かれた、IKAへと形を変えることになった。
まあ、ここまでは良いのだが、問題はここからだ。認定制度を作る際、TAKOの一部の派閥やケロリストへの野心を持った外部のカエルたちがFUGUと結びつき、お互いの利益にになる形で話を進めてしまうという事態がおきた。その派閥は現在KAME(Kerolist Alliance for Member of the Erth:地球の仲間のためのケロリスト同盟)という団体になり、IKAと対立の様相を呈している。
今では、IKAとKAMEは、お互いそれぞれの優位性を主張し合い、さらなる内部の認定制度の制定など、泥沼状態である。
こんな様子を見ていて、私はカエル界にも若干の嫌気がさした。そしてそこから離れるためにも、はるばる人間界でフィールドワークに来たということなのだ。
先日、インフォーマントのシンリシにこの話を打ち明けたところ、彼は言った。
「河豚のその場しのぎの愚策から、蛸が烏賊になって、亀と対立しているってこと?水族館みたいで、面白いね。」
私は、人類は滅ぶべき存在ではないか、と思った。
※「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」
コメント